英雄は煩悩でやられるというけれど、まさしくその通りだと実感した話
ぼくはやる事もなく、夜の原宿に佇んでいた。
理由はこうだ。
前日に先輩に「アナウンサーくるから」と適当な誘い文句で飲み会に誘われ、定刻10分過ぎた頃にお店に到着した。しかし、周りを見渡しても、店員に聞いてもそれらしき団体はいない。
つまり、完全に日程を間違えた。
貴重なお盆休みの夕方。急にやることが何もない。
考えた。
どうにかしてこの時間を無駄にしたくないと考え尽くした結果、閃いた。
タウンウォッチングしよう、と。
タウンウォッチングとはなにかと言うと、人間観察のようなものである。
人間観察をすることによって、普段の人の動きとは違う動きを発見し、それを企画にしていくのだ。
例えば、「おひとりさま」という言葉がある。
これは、昔にはいなかった、一人でレストランに入ったり、一人でカラオケをしたりという人々が増えてきたことから、その生態が社会によって発見され、その言葉が社会現象として取り上げられたことにより、形式知となった。
とどのつまり、タウンウォッチングとは、街でそのようなまだ誰にも気づかれておらず、しかし誰もが"なんとなく目にしている"ような光景を先回りして、企画の種を発見する大事な作業なのだ。
ちょうど時間もあるし、会社に企画課題を出されていたため、インドア派の僕にとってはトレンドの中心地にいる状況というのはまたとないチャンスであった。
とりあえず、タウンウォッチングをどうやってやるのかも良く分からないので、なんか最先端っぽそうな竹下通りをポケGO起動しながらぶらぶら歩いてみた。
握手した過ぎて、少し追いかけるも、
いかんいかん
おれ、タウンウォッチングにきたんだった
と回れ、右。
原宿を再度ぶらぶらし始める。
ラフォーレの前に到着した。
うん、ここもなんか最先端っぽい
ひとまずラフォーレから出てくる人々を観察することにした。
10分経過
「うん、何もわからん」
20分経過
「なるほど、何もわからん」
30分経過
ポケモンGOに夢中になる
40分経過
こんなの何も気づくわけないじゃん…とポケモンGOをいじりながらそう思った時、
ついに恐ろしいことに気づいてしまった。
原宿の女の子、かわいくね?
急に、何かが弾け飛んだ気がした。
そして、その時を境に、もはや可愛い娘しか見れなくなった。
いつの間にか、タウンウォッチャーではなく可愛い女の子を特定の位置から、ひたすら目で追う変態ウォッチャーと成り果てていた。
まあでもあれだ。
可愛い娘をターゲットにした新しいアレとか、もろもろ何か閃くかもしれないし、これはまごう事なき、タウンウォッチングである。
おわまりさん、これは決してやましい気持ちはないんです。仕事の一環なんです。
さらに、夜とはいえ、夏。外は蒸し暑い。
次第に大きく露出した服を着ている女の子に自然と目がいくようになった。
これはあれだ。肌を露出している女の子の企画を考えているのである。エロい気持ちなんて1mmもない。目を凝らしたら、サイドから下着が見えることなど全くないのだ。
おそらくこれも間違いなく一種のタウンウォッチングであろう。
しかもである。今は、華金の20:00を回るところ。ちょうど仕事帰りのOLらしき人がちらほら一人で歩いている。
かれこれ30分程度女性を目で追っていると、無性に女性と知り合いたくなってきた。
あれ、俺タウンウォッチングにきたんだよね?
でも、あれだ。
可愛い娘と知り合うのもある意味タウンウォッチングだろう。
よし、もうなんでもいい。女性とタウンウォッチングするぞ、と動き始めた瞬間、、、
ざあああああああああああああああああ
うん……、カラスが鳴くから帰ろう。