ヨノナカ童貞。

食物連鎖の下から2番目

ホワイトデーの思い出

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会社でホワイトデーのお返しの話題になった時、ニヤニヤした上司に聞かれた。

「ホワイトデーの失敗談とかある?」

社会人になって数年。
さすがに最近、甘酸っぱい経験はしなくなったなあと思いながら、改めて昔を振り返ってみた。

…がぼくはホワイトデーを人にあげたことがない。考えても考えても人にあげた記憶がないのだ。

もちろん、バレンタインを貰ったことがないからという訳ではない。

そこには、少しだけ甘酸っぱい思い出があったので、その中から1つだけエピソードを紹介してみようと思う。

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20歳まであと1ヶ月となった頃。
男子校出身ということを禍いしてか、ぼくはほぼ20年もの間、人生で一度もチョコを貰ったことがなかった。

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その頃、ぼくは某大学受験の予備校でチューターのアルバイトをやっていた。
チューターとは聞き馴染みがないかもしれないが、受験生の一番身近な先輩として主に担当教科を教えたり、時には受験の悩みなんかも聞いていた。

200X年のバレンタインデー。

よりによってサークルに出れずバイトのシフト。
「今年もチョコなしかあ」と思いながら、いつも通り勤務していると、ごくたまに勉強を教えてあげていた女子高在籍の女子生徒2人組に、唐突に「先生、はいあげる!」とチョコを渡された。

予想だにしない出来事だったので呆気に取られたが、義理チョコとはいえ人生初めてチョコを貰った。とても嬉しかったので、バイト終わりに大切に食べた。


3月に入ると、4月以降大学が忙しくなることもあり、ホワイトデー直前に予備校をやめることになった。

何人かの生徒とはたまに雑談する間柄になったとはいえ、わざわざ挨拶回りするのも変かなと思い、最終出社日の勤務を終えてからも特に別れを告げる予定もなく帰ろうとしていた。

そしたら出口に向かう途中、ばったりとバレンタインにチョコをくれた女子生徒の1人と鉢合わせた。今日限りで退職することを女子生徒にはもちろん伝えていなかったので、


「あ、じつは今日最後なんだよね。」


としれっと告げると

意外にも


「ええええええええええええええ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!!!!」


と大慌てで走って教室へ戻っていった。


とはいえ教師と生徒の立場だ。他の生徒に少しでも誤解を与えるのもマズイと思い、足ばやに出口を出るとそこには女子生徒が息を切らしながら待っていた。

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「先生、一緒に帰ろ」


「あ、ああ」


そんなに雑談する間柄でもなかったが、塾から駅まではそれなりに距離があるし、「最後ぐらい良いか」と思い一緒に帰ることになった。

帰り道は色々と話した。 
なぜ辞めるのかとか、次のバイト先は決まったのか、彼女はいるのかとか…他愛のない話をたくさんした。

初めて勉強以外のことを話したがそれなりに楽しかった。

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そして駅に到着する。

駅の階段を降り、プラットホームにで電車を待つ。彼女は上りの電車、ぼくは逆方向の下りの電車のため、ここサヨナラかなと思っていた。


電車の到着のアナウンスが鳴る

いよいよ別れの時が近づいてくる


会話も途切れ、しばしの沈黙が流れたあと、


「先生、またどこかで会えるよね?」


と女子生徒が聞いてくる。



「そうだね!きっと」


そうして、最後の別れを告げた。



こうしてホワイトデーを返すこともなく、もちろんその生徒とは二度と会うことはなかった。
それでも、ホワイトデーの時期になるとふと思い出す。

今や顔ももう思い出せなくなってしまったが、元気にしてるかな。